月経困難症(生理痛がひどい)
月経の開始に伴い下腹部・腰痛などの疼痛とともに頭痛、悪心、嘔吐などの症状を伴い、月経終了後に症状が消失または軽減するものを月経困難症といいます。月経痛(生理痛)はほぼ同じ意味として使用されています。
月経困難症は、その原因により以下の2つの病態に分類されます。
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1 機能性月経困難症
骨盤内に、特別な器質的な原因がなくほとんどの月経困難症がこれにあたります。月経時に子宮内膜で産生されるプロスタグランジンが、子宮筋を収縮させ腹痛がおきます。また全身に作用して頭痛、嘔気、嘔吐、下痢などの原因になります。 -
2 器質性月経困難症
病気が原因となって引き起こされるもので、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮や卵巣の炎症、子宮後屈症、子宮奇形などが原因となります。
診察・検査
月経の時、月経痛の他に頭痛、吐気、嘔吐、下痢などの症状が強いときには、我慢しないで受診してください。
診察は、まず問診をおこない症状の程度とその出現時期を確認します。その後必要であれば超音波検査をおこない、子宮・卵巣に子宮筋腫、子宮内膜症などの病気がないかを調べます。また血液検査を行い、ホルモンの状態、貧血がないかなどを調べます。
※思春期の患者さんは、できるだけお母様と受診していただき、超音波はお腹のうえから行います。
治療
- 1 まず痛みに対しては、鎮痛剤、鎮痙剤などを処方します。
- 2 漢方薬も有効です。
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3 上記1、2で効果を認めない場合は、低容量のピルも有効です。
ピルを服用することで、排卵や子宮内膜が厚くなることを抑えることができ、その結果痛みの物質(プロスタグランジン)を抑え、月経痛や腰痛などの症状を改善します。
黄体ホルモン放出IUS(ミレーナ○R52mg)
子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出する子宮内システム(Intra Uterine System)です。ミレーナから放出されるホルモン(レノノルゲストレル)は子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態となり月経量を減少させるとともに月経痛を軽くします。また子宮内膜の増殖を抑えることにより妊娠の成立(受精卵の着床)を妨げたり、子宮の入り口の粘液を変化させて精子が膣内から子宮内に侵入することを妨げることで避妊効果を発揮します。 (ミレーナを避妊のために使用する場合には、保険は適応されません。)
黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト錠)
内分泌療法に属する黄体ホルモン剤で卵巣の働きを抑えて排卵を止めることで、月経 を起こさないようにする働きがあります。また、子宮内膜にも直接敵に働いて、子宮内膜の増殖を抑える働きもあり、月経痛の症状に対して効果が認められています。 - 4 イライラや、鬱症状、不安感や不眠などの精神症状を伴うときに抗不安薬を処方します。
- 5 子宮筋腫、子宮内膜症などの病気がある場合は、その疾患の治療を行います。
月経前症候群(PMS)、月経前緊張症、月経前不快気分障害(PMDD)
月経の始まる3~10日前頃より神経が過敏・緊張状態となり、手足や顔面、お腹のむくみが出現し、体重増加、食欲亢進、抑うつ状態などの症状が出現します。これらの症状は、月経の開始とともに消失または軽減します。
症状は大きく分けると以下の4つのタイプに分類されます。
- 1 不安、イライラする、怒りっぽくなる、手足のむくみ、疲れやすい、だるい、眠い、肌荒れ、にきび
- 2 下腹部の痛み、下腹部膨満感、乳房の張り・痛み、頭痛、めまい
- 3 食欲亢進(ストレスによりチョコレートなどを好む)
- 4 抑うつ状態、気分の落ち込み、憂うつ、悲しくなる、絶望感
診察・検査
問診時に、月経前に上記のような症状が出現し、月経開始にて軽減、消失することを確認します。血液検査にて貧血や肝機能障害などの状態を調べます。必要に応じて尿検査、血液検査を行います。
治療
治療は症状のタイプによって異なります。
- 1 不安や緊張などの症状が強い時は抗不安薬、漢方などを処方します。
- 2 むくみや体重増加が目立つ時は利尿剤などを処方します。
- 3 食欲亢進の目立つ時は、食塩や砂糖などを制限する食事制限を行います。
- 4 にきびや肌あれの目立つ場合、低容量のピルも有効です。
- 5 ウォーキングやエアロビクス、水泳など体を動かすことで血行を良くすることも有効です。またアロマテラピーなども有効といわれています。
過多月経(月経が多い)
月経の量が多く、普段の生活に支障をきたすような場合を「過多月経」といいます。通常では、多い日でもナプキンを2時間毎に変えるくらいが一般的ですが、月経の時にレバーのようなおおきなかたまりが混じっている、昼でも夜用のナプキンを使う日が3日以上あり、普通のナプキン1枚では、1時間ももたない、また以前より月経量が増え、日数も長くなったなどの症状はありませんか?原因として無排卵などのホルモン分泌の異常、子宮の病気である子宮筋腫や子宮内膜症などが原因となります。
※過多月経による貧血
月経時の大量の出血により、体内の鉄が不足して全身に酸素を運ぶ血色素とよばれる赤血球に含まれるものが十分に作られなくなります。月経による定期的な出血で鉄が不足してきますが、ゆっくり進行するため、貧血状態に体がなれてしまい、症状が自覚しにくいのが特徴です。症状が進むと、動機、息切れ、疲れやすい、めまい、頭痛、氷をバリバリ食べたくなる、脈が速い、脱毛、むくみなどの症状が出現します。
検査
- 1 子宮がん検診にて子宮頚部、子宮内膜の細胞に異常がないかを調べます。
- 2 超音波検査にて子宮筋腫、子宮内膜症などの病気がないかを調べます。
- 3 血液検査にて貧血の状態になっていないかを調べます。
治療
- 1子宮筋腫や子宮内膜症の場合は、その病気の治療を行い、貧血の状態であれば、貧血の治療をおこないます。
- 2黄体ホルモン放出IUS(ミレーナ○R52mg)=子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出する子宮内システム(Intra Uterine System)です。ミレーナから放出されるホルモン(レノノルゲストレル)は子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態となり月経量を減少させるとともに月経痛を軽くします。また子宮内膜の増殖を抑えることにより妊娠の成立(受精卵の着床)を妨げたり、子宮の入り口の粘液を変化させて精子が膣内から子宮内に侵入することを妨げることで避妊効果を発揮します。 (ミレーナを避妊のために使用する場合には、保険は適応されません。)
- 3子宮筋腫、子宮内膜症の治療は、ホームページの子宮筋腫の治療、子宮内膜症の治療を参照してください。
無月経(月経がこない)
妊娠の可能性がないのに、これまであった月経が3か月以上経過しても次の月経が停止した状態を続発性無月経といいます。
また、18歳になっても月経がみられない場合を原発性無月経といいます。
原発性無月経の原因には染色体異常や子宮や卵巣の発育障害などがあります。
続発性無月経の原因は、無理なダイエットなどによる体重減少、過度のストレス、下垂体腫瘍(高プロラクチン血症)、排卵がない(多嚢胞性卵巣症候群など)、早期に卵巣の働きが止まってしまった場合(早発閉経)などがあります。また無月経以外の症状として肥満または痩せ、乳汁分泌、無気力、陰毛・腋毛の脱落などの症状があります。
いずれの場合も受診をして原因を調べ治療することをお勧めします。
診断・検査
続発性無月経の場合は、まず問診、面談にて月経がいつからこなくなったか、期間はどのくらいかを確認し、体重増加、・減少、環境の変化、ストレスの有無などを確認し乳汁分泌など他に症状がないかを確認します。検査ではまず血液検査(ホルモン検査)、超音波検査にて子宮・卵巣に異常所見がないか調べます。その後ホルモン剤を投与し、月経がくるか否かを確認します。可能であれば基礎体温表をつけていただき、その後は無月経の程度によってホルモン療法を行います。
原発性無月経の場合は、子宮、卵巣の発生学的な異常もあるので、超音波検査やMRIなどの画像検査を中心に行います。
治療
それぞれの原因となっている病気を見出し、その治療を行います。
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